或る夫婦のこと

先日観た映画の話。

ぐるりのこと。

人生に於ける「希望と絶望」「生と死」といった相克が、夫婦とぐるりのこと十年を通じて描かれていた。
直前にお友達と「俳優さんって“実力派”とか“個性派”“演技派”にカテゴライズされることがあるけれど、あとはどんなのがあるだろうね」と話していたのだが、リリーさんは“雰囲気派”あるいは“ニュアンス派”俳優*1という新たな分野を切り拓いたのではないかしら。この作品のカナオという役は、上手く云えないが、リリーさんじゃ物足りないんだけどリリーさんじゃないと成り立たなかった。そこに居るのはリリーさんだが、発している雰囲気がカナオという感じか。今自分が書いていることその物がニュアンス的で甚だ説得力がないのだが、つまりは悪くなかったということ*2である。木村多江さんも勿論良くて、トマトを食べるシーンや鼻をペロリと舐められるシーンとかちょっとした、殊、夫婦の場面がものすごくリアル。良かった。人生の希望って実はこうしたちょっとしたことなんだろうなと思う。

作中、タイムスタンプとしての役割もあるのだろうが、時代を騒がせた事件の裁判描写がありその被告人が悉くご本人とそっくりなのである。加瀬さんやらシャンプーハットの赤堀さんやら、個人的にはかなり贅沢なキャスティング。

*1:ネーミングセンス皆無。

*2:多少、雰囲気で押し切っている部分もあったのだけど。