生きること

八月最後の日は日曜日。黄色のTシャツの人々をぼんやりと眺めていた。20代も後半寄りになって涙脆くなったのも手伝ってか、やはり泣いてしまう。昨日から涙腺が緩くなっているのだろう。私よりも若い今井絵理子が母親として聴覚障害を持ったご子息の現実を前向きに受け止めて寄り添って生きている姿には、何かこんな私が五体満足で生きていてすみませんと申し訳ない気持ちになった。まあでもわざわざこれを見て後向きになっていたら本末転倒である。私は私なりに、昨日の試写会の感想でも書くか。

おくりびと(来月13日公開)

美しい山形は酒田市の景色、柔らかで雄大なチェロの調べ(またしてもジョー*1の職人技が光る…!サントラ欲しい…!)、美味しそうな食べ物、一人の納棺師を通して生と死を真摯に取り扱った作品。うーん、こう書くと安っぽいか。けど構えて観なくても良いしなあ。
生きることは即ち、食べること働くことそして死に向かって行くことなのかも知れない。河豚の白子を食べ、チキンを食らい、フランスパンに齧り付く。そうしながら、幾人ものご遺体と向かい合いおくりだす。ひたすらに生きて死と相対する主人公。死ぬことは生きることが途絶えることではなく、また新しい人生への門をくぐることなんだとある者は云う。彼もまたおくりびと。火葬場係りのその人はぽつりとそういう様なことを云いながら、長く馴染みだった友人を送るために炉の火を点ける。ぼっと音を立てて炎が上がる。堪らなく泣いてしまった。死を見つめてきた者の発言。極めて宗教的だがそれだけに粛々としているように思われた。死に対して尊厳を抱くことは、生きることに対してもまた然りなのであろう。納棺師の見事な所作がそう感じさせた。

果たして全くまとまらない。これじゃ内容がさっぱり不明にも係わらず、局地的にはえらいネタバレしている。いつものことか。ここで声高に観て、とは云わないが父母には勧めてみよう。

*1:久石さん。